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モノクローム [写真について]

Paul Newman.jpg

RICOH GR-1s   NEOPAN 100 ACROS

 

カメラ雑誌をめくっていると、4歳の娘が言った。

「どうして、これは、きれいな写真じゃないの ?」

最初は意味がわからなかったのだけど、

どうやらモノクロームの写真のことを指して言っているらしい。

つまりは、「きれいな」色がないから、

「きれいな」写真じゃないということなのだ。

(子供の感覚だと色、すなわち、きれい!)

 

考えてみれば、モノクロームは不思議な世界だと思う。

モノクロームというのは、写真特有のモノだ。

絵画には、墨絵というものもあるけど、

カラー絵画、モノクロ絵画なんて言い方はない。

 

上質のモノクローム写真は、本当に美しいと思うんだけれど、

「きれいな」色がない写真、という子供のモノクロ写真の見方も、

間違っていないし、むしろ正直なのかもしれないなあ・・・。

 

 


カメラオブスクラからデジタルカメラまで(4) [写真について]

前回、デジタル写真は「光の地図」だと結論付けたのだけれど、
実を言うと、ちょっと表現が消化不良な感じがしていた・・・。

写真に限らず、デジタルの本質は、もっと「怪しい」ものだと思う。
でも、そのときは上手く言葉にすることができなかった。

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Canon EOS-1N  EF24-85mm F3.5-4.5 USM / RDPⅡ(Photoshopでモノクロ化)

 

デジタルは、さまざまな事象を記号化することだ。
”怪しい”言葉に置き換えるなら、
さまざまな事象を「呪文」に変換するということ。

呪文・・・これこそデジタルを説明するのに、ふさわしい言葉じゃないだろうか?

メモリーに蓄えられるのは、写真のようで写真でない、
音楽のようで音楽でない、文章のようで文章でない、
データという名の呪文・・・。

呪文に変換することで、
アナログ時代には考えられなかった「魔法」が
いとも簡単に操れる。

デジタル写真とは「光の呪文」を操ることだ。

デジタル技術の概念は、本質的に魔術に近いような気がする。

090225.JPG
 

Canon EOS-1N  EF24-85mm F3.5-4.5 USM / RDPⅡ(Photoshopでモノクロ化)  2000年

 

 


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カメラ・オブスクラからデジタルカメラまで(3) [写真について]

Heidelberg29 42.JPG

Canon EOS-1N  EF24-85mm F3.5-4.5USM / RDPⅡ

 

アメダス(AMeDAS , Automated Meteorological Data Acquisition System)、
TVの天気予報などでおなじみの気象庁の「地域気象観測システム」、
日本国内に約1300箇所の観測所があり、
降水量、気温、日照時間、風向・風速の4要素の観測点が20km四方の
正方形につき1箇所設置されている。

アメダスは非常にマクロ(巨大)な情報システムだけど、
一方、こんなミクロなシステムもあったりする。

「22.3×14.9mmのフィールド内に、約1510万の光の観測点があり、
それぞれ4.7μmごとに設置されている。」

実はこれ、デジタルカメラ、具体的にはキヤノンのデジタル一眼レフ、
EOS50Dの画像センサーのスペックだ。

EOS50Dは14ビットA/D(アナログ→デジタル)変換だから、
降り注ぐ光の強弱が2の14乗、16384段階に評価される。
それぞれ1510万箇所の観測結果を元に
コンピューターが地図形式のグラフィックにする。

実測に基づいたコンピューターグラフィックスであるという点で、
下の気温分布図と、デジタルカメラの写真には共通点がある。

 

0201.JPG

銀塩写真が、感光物質による「光の版画」だとすれば、
デジタル写真はコンピュータによる「光の地図」だといえるかもしれない。
地図は、実測された膨大な情報を画像化したものだから。

 

 


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カメラ・オブスクラからデジタルカメラまで(2) [写真について]

Antwerpen 2000.JPG

Canon EOS-1N  EF24-85mmF3.5-4.5USM /  RDPⅡ

 

カメラがラテン語の文字通り「部屋」だとすれば、
かつてカメラには裏蓋という名の大きな扉があった。
その扉はフィルムを装てんするための扉だ。

一眼レフならば、中央にフォーカルプレーンシャッターの
触れてはいけない薄い幕がある。
また、一度フィルムを装てんしてしまったら、
この部屋の扉を決して開けてはならない。
開ければ、センサーでありメディアそのものでもある
フィルムが、一瞬のうちに焼けてしまう・・・。
取り返しの付かないことになる。

「部屋」は聖域だ。
触れてはいけないもの、してはいけないこと、
掟に縛られている。

デジタルカメラには大きな扉がない。
とくにコンパクトデジタルカメラの部屋は
「密室」になっている。
(デジタル一眼レフにはレンズマウントという
窓が存在するけれど、そのために
センサー部への埃や塵の侵入を防ぐための
工夫をせざるを得ない。)

普及カメラの究極の形は、「密室」化に向かう。

それは、フィルム時代からすでに始まっていた。
はじまりは「写ルンです」だったと思う。
あれは1本のフィルムがあらかじめ装てんされていて、
そのままカメラごと現像に出すものだから
裏蓋は必要ない。
密室カメラ第1号だったかもしれない。

※1888年に発売された「ザ・コダック」はカメラごとコダック社に送って
現像・プリント、そして新しいフィルムを再装填してもらう
システムだったそうだ。100年以上前にすでに密室カメラは存在していた!
(2013/11/03補足)

 

最新の銀塩フィルム規格、1996年登場のAPSカメラにも裏蓋がなかった。
フィルムカメラでありながら「部屋」の内部が見られない。
隠された部屋の隣のフィルム室にフィルムカートリッジを
入れると自動的にフィルムが装てんされる仕組みで、
また現像後のフィルムはカートリッジの中に入ったまま返還され、
フィルム面を目にすることも出来ない。

触れてはいけないもの、してはいけないこと、
面倒な掟をなくし、
ユーザーに「聖域」を意識させない・・・。
数十年にわたりカメラメーカーは、そのために努力してきたのだ。

 


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